プリウスVSインサイト

こんなこと御存知の方がいる必要はないが、4月からずっと、図書館で経済系の雑誌やら日経産業新聞やらを眺めて楽しんでいる俺だが、最近は石川憲二『エコカーの技術と未来』(オーム社、2010)や井元康一郎『プリウスVSインサイト』(小学館、2009)などの、一昨年のエコカー減税ハイブリッドカーの価格破壊後にリリースされた書籍や文献を読みながら、代替エネルギー車について談義するのが常になっている。

エコカーの技術と未来−電気自動車・ハイブリッドカー・新燃料車−

エコカーの技術と未来−電気自動車・ハイブリッドカー・新燃料車−

プリウスvsインサイト

プリウスvsインサイト


なぜそもそもインサイトが最初にハイブリッドで200万円を切る価格破壊に成功し、ハイブリッドの形式の違う2台が同じ価格帯で競うように売られているのか、特に複雑なシリーズパラレルハイブリッドを採用するプリウスインサイトに対抗するべく大幅に価格を下げられている点など、非常に興味深い。基本的にはプリウスのほうが複雑・高コスト・低燃費であり、ホンダにとってはあくまでハイブリッドは補助的で、将来的に全車種に搭載できるほど汎用性を持たせたがっている(トヨタも似たような発言があった気がするが)、相対的に小型でシンプルなものであるという点を知っていないと、互いのメリットは享受できないと俺は思うのだけど、いかんせんまだ「ハイブリッドカー」という限定されたジャンル内での話だから、細分化していくにはまだ台数が足りない。

プリウスαに関しては俺は大歓迎であるトヨタもSAIでラグジュアリー路線を打ち出してはいたが、車格がプリウスとあまり変わらないことや、レクサスにHS250があったりすることもあって、なんというかプリウス独走。トヨタ自体が他車種がプリウスに食われるのを覚悟で前チャンネル販売にしているというのも理由の一つ。それは、老若男女を問わずハイブリッドカーを普及させようというトヨタの心意気のように思える。

もちろんここで技術を蓄積し生産ベースに乗せておけば完全なEVになったときにノウハウが豊富にあって有利だ(現状でも日産すらトヨタからハイブリッドシステムを拝借しているのだ)というメリットはあるが、目先の損得にこだわるのではなく、自動車を作る企業として、国の交通事情・自動車事情を改善させる役割を担う義務があるという自覚があるのだろうか、と好意的に受け止めている。

あ、CR-Zフィットハイブリッドがいる現在、今となってはインサイトはやっぱり売れてないんだろうか(もともと月産5000台が目標のクルマだが)。前者2台を生み出すためにインサイトは必要な車だったけど、プラクティカルさではフィットが、ホビーとしての面白さはCR-Zが、それぞれインサイトに対して優る立場に設定されていると思うので、インサイトはひょっとして、青山のホンダ車内にあるという消えて行った車名たちの墓碑群に舞い戻ることになるのだろうか。そういうのがあるという都市伝説がある。



ちなみにHVより一歩進んだ電気自動車、うちの大学では日産のハイパーミニを採用している。インフラ問題は残るが、学内車両だとその問題もない。

基本的に航続距離と充電インフラと価格問題が常にガソリンより深刻に取り上げられがちな(ガソリン車はエネルギー効率は悪いが、燃料の確保・管理が簡単で安価なため急速に普及したのである)新エネルギー車であるが、たとえば現在完成間近のワイヤレス充電技術を路線バスのバス停に仕掛ければ、航続距離はほぼ気にしなくてもよくなるんじゃないか。そういうふうに、限定的な部分においてはガソリン車をはるかに凌ぐ利便性を誇っているのだが、とかく自動車というものは1台でどこでも、どこまででも走れるのが当たり前になってしまっているから、顧客の住んでいる地域の多様性を考えれば、なかなか局地的に開発しにくいのは理解できる。

ならば、ガソリン車の汎用性は捨てて、目的を絞ったうえで開発すればもっと普及はスムーズにできると思うのだが。車の所有の形も、それによって変わってくるかもしれないけど。