Undercooled

こんにちわ。というわけで早速音楽の話題。
skmtSocial.comで1月9日(日)に配信された、Ryuichi Sakamoto | Playing the Piano in Seoul/Korea 2011の話。

そこに至るまでの伏線は牧村憲一津田大介『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)PP27〜28あたりを参照していただくとして。
昨年の教授の北米ツアーでのUst配信から始まり、大貫妙子さんとのUTAU TOURを経てここに到るまでわずか3ヶ月。それを自ら追って体験してきました。全てPCからそれが出来る時代になったのです。

昼の部・夜の部があったけど、前者はHDMIでテレビに出力して見てた。
最高画質音質のチャンネルでDVDくらいの画質かなあ。音質も結構いい。
こういうライブに限らず、映像のクオリティは音質が意外と効くのです。
こないだのスクツプラス大阪を開催してくださったquzyさんのコメントをお借りするなら、

オーディオがちゃんと聞こえれば、動画全体のクオリティはぐっと高く感じられます。
Quzyのフォー速『スクツプラスのUstreamするのに使った機材(ハードウェア編・Mac)』より


とのこと。普通のイベント中継でもそれなのだから、いわんやコンサートをや、ということね。


では何故俺がわざわざ、前日のリハーサルの中継とは違って、自室に引きこもらず、リビングのテレビなんかに出力してUstreamを見ていたのかということ。
それが「skmtSocial project」(サカモト・ソーシャル・プロジェクト)の趣旨なわけです。
Ustream配信というのは基本的に、自分一人でPCの前で見るものです。それを、もっといろんな人が集まってみんなでコンサートを見よう、というふうに推し進める。
その最たる例が、パブリック・ビューイング。ここに寄り集まってみんなで楽しくコンサートを見ようというその姿や心は、まだ一般家庭にテレビが普及し尽くす前の、電気屋の店頭でテレビを見ていた時代にどことなく似ているような気がしてならないのです。

また、

@yusukenamekata 音質・画質・臨場感はともかく、教授のライブを家でもタダで見られるようになったのがUst配信。それを家族とか友達とか皆で見ようっていうのが #skmts Project。それを拡大してパブリックビューイング。その会場に入るのにまたお金かかる。一周まわった感があるけど、どないやねん。

思ったこともまた事実。
気軽にフリーで、しかも限りなくDVDに近いクオリティでライブが見られるというのに、まあ、会場レンタル費をペイするために仕方ないとは思うんだけど、またお金払うってのはどうなのよ、と思わなくもない。


そして今回の音源はリマスタリングを施され、明後日(火曜日)からiTunes Storeで配信される。1500円×2部構成だ。
パッケージを伴わないデータでの音楽DL販売については好みもあれば賛否両論もあるだろうから、それはとりあえずどうでもいいとして。
普通ライブアルバムがこんなすぐに出ます? いくらピアノ2台(片方は教授自身の演奏をMIDI化して自動演奏したバッキング)とはいえ。
しかもそれが、多分普通にCD買うよりも安いですよね。skmsSocial project自体が非営利的なものであるというのもあるけど、それ以上にやっぱり流通コストとかモノのコスト(>データ販売)がでかいんでしょ。
音楽という“情報”にかかるお金は、1枚3000円のアルバムの中で、実はコレくらいが正当なのかもしれないしね。まあそうなると安い洋楽アルバムはどうなんだ! って話になるけどさ。


セットリストの話。

4PMの部
01.glacier
02.hibari (ショートver.)(midi連弾)
03.still life
04.in the red
05.nostalgia
MC (ハングルでご挨拶)
06.a flower is not a flower
07.水の中のバガテル(mizu no naka no bagatelle)
08.tango
09.美貌の青空(bobo no aozora)(midi連弾)
10.bolerish
11.high heels
12.the last emperor
13.merry christmas mr.lawrence
encore(アンコール)1
14.behind the maskmidi連弾)
15.tibetan dance(midi連弾)
16.thousand knives(midi連弾)
encore(アンコール)2
MC (ハングルでゲストのMC Sniperを紹介)
17.undercooled (ボーカルにMC Sniper
・・・公演終了
 
8PMの部
01.glacier
02.improvisation(即興)
03.hibari (ショートver.)(midi連弾)
04.still life
05.in the red
06.nostalgia
MC(ハングルでご挨拶)
07.a flower is not a flower
08.美貌の青空(bobo no aozora)(midi連弾)
09.tango
10.水の中のバガテル(mizu no naka no bagatelle)
11.before long
12.loneliness
13.the sheltering sky
14.merry christmas mr.lawrence
encore(アンコール)1
15.behind the maskmidi連弾)
16.happyend(midi連弾)
 ピアノver.収録 / /05
17.thousand knives
encore(アンコール)2
MC (ハングルでゲストのMC Sniperを紹介)
18.undercooled (ボーカルにMC Sniper
encore(アンコール)3
19.aqua


序盤がout of noiseからの曲ばかりだったからさすがに眠かったけど、後半はやっぱり本気です。
元々out of noiseの作風ってそんなに好きじゃなくて、もっと教授らしいクドいバッキングとか、東洋風のメロディーとか、或いは『CHASM』全体にある、生と電子音とノイズをカオスになるくらい混ぜ合わせてもなお、まだそれらを使いこなしてる感じとか、そういうところに魅力を感じて聴いているので、ちびちびピアノだけ弾かれてもなあ、というのもちょっとあるかな。
そういう感じ、特にバッキングの良さが出まくってるBehind The MaskとかThousand Knivesは、やっぱりすごいと思うわけで。決まりきった話だけどね。
Thousand Knivesも、4PMの方ではミスってたけど、8PMできっちりリベンジ成功。もう何十何百と弾いてきたであろうフレーズだけどね。


out of noise(数量限定生産)

out of noise(数量限定生産)

CHASM

CHASM

out of noiseなどの新しい曲は、スタジオアルバム版とライブ盤での違いはあまり無い。
これ ↓↓ によく似ていると思う。

比較的歴史のある曲は、この2枚のアルバムのアレンジがベースになっている。

http://d.hatena.ne.jp/04

/04

http://d.hatena.ne.jp/05

/05

ほぼ全てがピアノだけ、しかも多重録音というコンセプトそのものが、このへんから始まってるみたいで。
それより前の音源やライブ漁っても、連弾やコラボは出てくるんだけど……。



最後は、韓国のラッパー、MC Sniperとのコラボ曲『Undercooled』。ラップとピアノって言うのは相当異色だと思うけれど、どちらも説得力のある音だと思う。
それを合わせることも、決して不可能ではないのだけれど、やってみないと気づかないんだよね。


『/04』『/05』や、こういったアレンジに触れてみて思うのは、音楽のメロディやコードというのは、本当は時代やアレンジを変えても、変わらない魅力がなければならないということ。
もちろんアレンジが変わることで新たなことに気付いたり、雰囲気が変わることはあって然るべきなんだけれど、それでもやはりこの曲はいいなあと思える瞬間がないといけない。
普遍的な美というものが音楽にあるとしたら、それは例えば、ピアノ1本で美しくあり続けられるものの事なのかもしれないしね。
ピアノの音は変わらない。ずっとこのままだし、ごまかしもない。ピアノは嘘をつかない。
ああ、あれだわ。フックソングやひな壇芸人なんて浅はかなことやってる場合じゃないわ。
いや、俺がUst見てる横や裏で、K-POPアイドルにうつつを抜かしたり、YouTube寄せ集めのやっすい衝撃映像番組なんか見られたら、ついそう思ってしまうわけです。


年末のテレビでこれでもかというくらい同じアイドルたちの曲や、「感動しろ!」とばかりに流行った“泣ける”歌を何度もヘビロテされたら、そりゃあ嫌にもなるわな、と。
そろそろみんなゴリ押しに疲れてきた頃でしょう。まだUstreamとかのソーシャルメディアが、国民的アイドルのように全員に知名度が広がったわけでもないのにもかかわらず、何万人もの人が、このskmtSocial projectを見ていたのだから。