さよなら、僕のヒーロー。

Grazie!TOYOTA from Take Five

トヨタが、パナソニックトヨタ・レーシングが、2009年限りでのF1撤退を表明しました。

実を言えば、リーマンショック以前から絶えず撤退の噂はあったのです。何年も前から、思い出したように撤退撤退と話は出ていたから、今から思えばいつかは訪れることだと覚悟を決めておかなくてはならなかったのかもしれません。
それでも俺はどこかで楽観視していた。GMとクライスラーが破綻するような世界になってもなお、トヨタだけは特別だと心の中で思っていたことは確かです。パドックで一番大規模なチームだからだろうか、それとも世界最大級の企業のチームだから?それとも、トヨタだから?
理由なんてどうだっていいんです。ただ俺はひたすらに、初恋の人が去ってしまったような気分です。幼い頃から憧れ続けてきたパナソニックトヨタ・レーシングの解散(スタッフの次の雇用は?)……トヨタF1の意義と影響、そして撤退による波紋、富士スピードウェイ鈴鹿サーキットの兼ね合い、フジテレビの中継などなど、専門的な詳しい話はToca's roomで十二分に論じられていますので俺からは言うことはありません。強いて言えばスバル撤退に伴って消滅したBS4のWRCのことを思い出してしまったくらいでしょうか。

前述の通り、いや比喩を比喩でなく捉えて頂いて結構ですが、初恋の相手はトヨタF1だったと言っても過言ではないのが俺です。俺の中で輝いた特別な存在に対して抱く感情を恋にたとえるなら、ですが。
80年代〜90年代初頭のグループC、同時進行でWRC制覇、そして98年のル・マン復帰と99年のF1参戦表明、世紀が変わって2001年のTF101のシェイクダウンに2002年開幕戦オーストラリアのデビュー戦入賞……2004年にはルノーと袂を分けた鶴さん(ヤルノ・トゥルーリ)を迎え入れ、続いてラルフ・シューマッハをも迎え入れた翌年の第2戦マレーシアでトヨタF1初の表彰台を獲得して両手の人差し指を空に突き上げる鶴さん……アメリカと日本ではそれぞれ鶴さんとラルフがポールポジションも獲った。コンストラクターズ4位も手にした。ついでにジョーダンとミッドランドにもエンジンを供給した。2007年からはウィリアムズにもエンジンを供給した。2008年にはラルフに換えて同じ日独伊三国同盟からティモ・グロックを再デビューさせ後半戦で大ブレイク、今年はバーレーンでのフロントロー独占やシンガポールでの最終パッケージ投入とグロックの復活、続く日本でのグロックの負傷、鶴さんの力走でマクラーレンを逆転した値千金の2位表彰台、ブラジルでの小林可夢偉デビューと最終戦アブダビでのダブル
入賞……ただの一度も優勝出来なかったのが不思議なくらいに夢のような8年間でした。レーシングで俺に夢を見せてくれた。そして来年につながる取って置きのダイヤモンドの原石を世界に御披露目したばかりだったのに……あんまりです。昨年突然撤退したホンダや、来年限りで手を引くことが決まったブリヂストンもそうだし、かなり前から今年限りを宣言していたBMWもそうですが、今のF1はWRCの二の舞を踏んでいます。ホンダを引き金にしてどんどんメーカーが撤退しているその姿が、今やフォードとシトロエンの殴り合いでしかないWRCの現状につながっているようで恐ろしいのです。
かろうじてF1にとどまっている自動車メーカーはもうフェラーリフィアットメルセデスダイムラールノーの3社だけ……一体F1はどこに行くんでしょう!?プライベート・コンストラクター同士の争いを増やすという懐古的な流れに乗って小規模チームが乱立し、自動車メーカーの威信を示す場から再び“レース屋の戦場”へと回帰してゆくのでしょうか?
そして日本企業の撤退が相次ぐ今、日本グランプリとフジテレビの中継すらその意義を失いつつあるのではないか!?すでに製品が飽和した日本はアジアのマーケットとしては“例外的に”魅力的ではないのではなかろうか!?


せっかく部屋の模様替えなんかもしたのにこれではまた悲しみは増えるばかりです。ただでさえプライベートで参っていることだらけだったというのに、俺は一体何を糧にして生きてゆけばいいのでしょう……。

でも俺は最後にひとつだけ言おうと思います。


8年間、夢と憧れをありがとう。
俺はいつまでも彼らを愛し続けます。